本記事の目的は、過去に起きたパワハラを基とする事件を振り返り、そのうえで悲劇が二度と起こさないようひとりひとりが考える機会を提供することです。以下の5つの事例を紹介します。
・釧路赤十字病院
・大口病院
・仙台市救急医療事業団
・誠昇会北本共済病院
・患者からの暴力
2013年、北海道釧路市の病院に勤めていた当時36歳の新人看護師である村山さん。その年に、遺書を残して実家で自殺してしまいました。遺書には、職場の上司から言われた暴言が記されていたとのこと。各種報道によると、現場でのミスをきっかけに人間関係のトラブルが起きたとのこと。
村山さんの両親は、上司である医師からの「おまえはお荷物だ」という発言などを受けて息子はうつ病のような状態になっており、それが原因で自殺したと主張しています。
このことを踏まえて2015年と2017年に、両親は釧路労働基準監督署へ、労災を申請・再審請求を行いましたが、どちらも棄却されてしまっています。
2018年7月現在、村山さんの両親は引き続き、労災認定を求めるために国を相手取り裁判を開始。国は、「労災申請の棄却は間違っていない」と主張を続けており法廷で争いは続いています。
2016年に大口病院の患者2人が、点滴に混入していた異物が原因で亡くなった事件がありました。それから約2年後の2018年、同病院に当時勤めていた看護師の久保木愛弓さん(31歳)が事件の容疑者として逮捕されました。
彼女は、他の患者も含めて20名ほどに対してやった、その理由として勤務中に患者が無くなった際の、遺族への説明などが苦手だったため、と供述しています。
同病院では2016年に患者の不審死が起きる前に、看護師のエプロンが切り裂かれていたり、看護師の飲み物へ異物が注入されており、ニオイで気づいたが飲み口に触れた口の部分がただれる、など様々なトラブルが発生していました。久保木さんは2018年7月時点で、患者の殺害は認めましたが、この看護師に関わるトラブルへの関与は否定しているとのこと。
病院内の看護師間の関係はあまりよくなかったらしく上司の看護師が部下を激しく叱ったり、無視したりすることもあったとのこと。パワハラ的なやりとりが頻繁に起きる職場環境も久保木さんへ影響を及ぼしたのでは、と推察しているメディアも少なくありません。
仙台市にある公益財団法人「仙台市救急医療事業団」が運営する市の急患センターに勤務していた40代の看護師2人は、勤務時間「週29時間以内」で働いていましたが、2016年度は「週20時間未満」とされてしまうことに納得がいかず、事業団の60代スタッフを訪問し個別に面談を行いました。
その面談の場で、スタッフは机を叩いたり、解雇することをほのめかしたり、非常識なので反省するべきなどと看護師に伝えたとのこと。
女性2人は非常勤の看護師だったため、契約は1年ごとに更新されていました。2人はこれをパワハラとして訴訟を起こし、結果、事業団がそれを認め、改善する意思を示したうえで和解成立のため慰謝料が払われました。
2001年に准看護士としてこの病院で働いていたAさんが、Aさんを含む男性看護師(准看護士)5名の中で最も先輩だったBさんの執拗ないじめにより自殺してしまった事件です。Aさんは看護師資格の取得を目指して看護学校で学びつつ、准看護士として現場経験を積んでいました。
この病院における男性看護師間の人間関係はかなりの縦社会であり、AさんはBさんから職場での業務依頼の範囲を超え、プライベートまで支配的にいやがらせを受けていたとのこと。以下がその嫌がらせの例です。
・Bの遊びに無理やり付き合わされ、看護学校の試験前でも朝まで飲みの場に居させた
・肩もみや家の清掃、洗車、送迎など業務と全く関係ないことを課した
・缶のお茶を1つ3,000円で買い取らせた
・Aが恋人とデート中であることを知りながら、仕事のためと偽って病院へ呼び出した
・Aの携帯電話を勝手に使い、その恋人へメールを送るなどした
・2001年の職員旅行において、飲食の費用9万円の負担を押し付けたうえ、お酒を飲んで急性アルコール中毒にならざるを得ないような状況へ追い込んだ
・暴言を職場で直接吐いたり、メールで送った
・2002年の病院の会議で、Aの様子がおかしいこと、疲れやストレスからくるミスが見られ心配である、という話題になった際、Bはその場で「仕事へのやる気が見られない」などとしてAを非難
そして2002年にAさんは自宅で自殺。Aさんの両親は職場の病院とBさんに対して裁判を起こし、賠償請求が成立しました。
訪問看護師の場合、患者宅で嫌がらせや暴力、セクハラ被害を受けることもあります。大声で怒鳴られたり、能力が低いといわれたり、殴られた・刃物をちらつかせてきたなどといったかなり暴力的な被害も。
患者からの嫌がらせは訪問看護だけではなく、病院で起きることもあります。2013年の事件では、看護師のAさんが、ベッドの上で暴れる患者さんを抑えるよう指示されて、その作業を行っていたところ、その患者さんに噛みつかれ、その結果C型肝炎を患ってしまいました。
看護師Aさんは、この病院に勤務してまだ半年しか経過しておらず、「暴れる患者さんを抑える」業務もこれまでほとんどやったことが無かったとのこと。
裁判では、病院はその業務に伴うリスクや、Aさんの能力を踏まえたうえで、このような出来事が起こることはある程度予見できたし、防げたはずだという点が問われ、Aさんへ慰謝料を支払うことになりました。
被害に遭っていた看護師による証言で明かされた事件。50代の女性歯科医師が、診療を拒否したり、看護師職員へパワハラ発言をしていたとして懲戒免職となりました。なお本人はこの件について否定しているそうです。
診療拒否に関しては、同市内の紹介状を携えてきた患者さんの治療を拒否したとのこと。同市歯科医師会がこの医師の同市立病院の歯科医師就任に反対されたということがきっかけとなっており、医師は反対した医師の医院をブラックリスト化していたとされています。
歯科衛生士・看護師など4名へのパワハラに関して、実はその医師は2004~5年頃に勤務していた病院でもパワハラを理由に懲戒免職となっていたという事実もあるそうです。
2013年春に、新小倉病院に勤務していた30代の女性看護師A。子供のインフルエンザの世話をするために病棟を早退したい旨を師長に伝えたところ、師長から職場に迷惑をかけるな、いつでもクビに出来るという旨の発言を受けたそう。
師長側としては、女性が子供の病気や欠勤が多かったり、一度退職をする方向だったが子供の世話は母親の力を借りることで勤務を続けると伝えていたことが背景にあったそうです。
同年秋に仕事のミスがあった際、ナースステーションでかなり厳しく叱りつけることもあったそう。同じくこのミスに関わった別の看護師さんには当日のできごとを書き起こすという罰が与えられましたが、Aさんは反省文の提出を要求されたそうです。
同年4月以降は有給の範囲内で休みをとり勤務していたが、その夏から通勤時に息苦しくなったり、眠れないことがあるなどして心療内科を受診。翌年3月には退職したそうです。
この事件はパワハラによる適応障害として裁判に発展。2015年に病院を運営する団体と元上司によるパワハラが認められ、120万円の支払いが命じられました。
以下の記事では看護師の皆さんから聞いたパワハラ体験談、「こんなこと言われました」などをまとめて紹介しています。
ぜひそちらもチェックしてみてください。
Twitter上でも、看護師さん達が受けた、受けたことのあるパワハラやそれに対しての意見がたくさん寄せられていました。そのいくつかを紹介したいと思います。
医者がひとこと言い返しただけでパワハラとか言うて騒ぐけど 数の力で自分たちのやり方を押し付けてくる看護師のやり方だって大概パワハ(字数
けいかちんさんじゅうななさい
followコスパと試験の簡単さだけ見れば圧倒的に看護師が一番だけど、先輩のパワハラ、患者様からのセクハラによる精神崩壊が一番多いのも看護師だからその後のリスクを考えるとコスパがいいとは……言い切れない←目をそらす
パワハラなみの指導を受けて心身症発症したけど、わかってくれる先輩もいてホットした。明日こそ仕事行くぞ、 わいは優しい看護師になるんや…
このみ
follow釧路の男性看護師さんのパワハラを受けて自殺の件。「パワハラが全くなかったとは言えないが、労災支給の基準には当てはまらない」って言ってるけど、自殺しても当てはまらない基準ってなに?じゃあどうしたら当てはまるの?
前田利恵子/りー先生/マエダリエコ
followここ数ヶ月で大手病院の医局の中とか看護師さんの世界が、今もなお昭和みたいな縦社会と知った。パワハラってこういうの、みたいなサンプルになりそうな話をいくつも聞いて、すごく驚いてる。辞める人が多いのも、復帰しないのも、そこにも一因あるのでは。対策方法ないかなーと、考える(´Д` )
新人看護師さんでパワハラ受けてる人いたら辞めてしまえ。パワハラをやるような人がのさばってる時点でそんな組織はその程度だよ。悩む前に行動あるのみ。
ひな@勉強垢
follow大口病院の件、加害者を擁護するつもりはありませんが 人と接する仕事は他のどんな事よりも難しくストレスも蓄積され、さらに人手不足からのオーバワーク 高齢者の方々への24時間切れ目のない看護の提供、そしてパワハラなどの人間関係から精神を病む看護師も多いです
phoenix
follow私は今回の大口病院殺人事件を教訓、きっかけに日本全国の医療機関に行政が看護師を引退されたシニアの方々の看護師OGさんを相談役として派遣、配置するべきだと思います。 題して何かあったらおばちゃんに言いなシステムを作って行くべきだと思います。
パワハラは放っておかず、素早く対処する、職場を辞めるなどの行動を起こす、といったことが大切です。精神的に、時には肉体的にも多大な負担がかかってしまう職場は、適切な環境であるとは言えないからです。
自分ひとりで解決しようとせず、しかるべき相談先へ問い合わせる、辛いと思ったら自身が変わることばかりを考えずにまずまわりを変えてみることを検討するのも大事です。
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